投資信託の実質コスト記載を2024年4月から義務化 投資業界の体質は変わるのか?

2024年4月から投資信託の説明書類に記載しているコストについて、コストの一部だけではなく実質コスト(総コスト)を記載するよう義務化します。これで投資業界の体質は変わるのでしょうか?

投資信託の実質コスト記載を2024年4月から義務化

日経新聞さんの投資信託の総コスト義務化に関する記事はこちら

投資信託、購入時の書類に総コスト記載 投資家わかりやすく - 日本経済新聞
2024年4月から投資信託のコスト開示が変わる。購入時に投資家に渡す書類に信託報酬など総コストの割合を載せるように、投資信託協会が運用会社約200社に求める。従来は個別に記載されており全体の投資家負担がわかりにくかった。一部では先行して開示...

まとめると。

■投資家が負担しているコストの種類

信託報酬:運用会社に支払う
保管費用:海外の信託機関に払う
書類作成費

■投資信託のコスト開示
コストは目論見書に記載されている

現状
主に信託報酬が記載されているが、他の費用は商品によって計上・記載方法が異なる

2024年4月から
投信の純資産残高に対する比率を総経費率として記載するよう運用会社に義務付ける

■コスト開示の背景

投信協会が目論見書に総経費率の記載を求めるのは、煩雑なコストの開示が投資家を惑わせているとの指摘があるため。

・書類の作成費を信託報酬に含む投信とそうでない投信があるが、合計のコストは同じでも信託報酬に含まない投信は信託報酬の低さがクローズアップされ、投資家の目を引きやすくなる

・「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス」の信託報酬は年率0.057%と低コスト商品として注目を集めたが、作成費や株価指数の使用料などは「その他費用」として計上され、最終的にかかるコストは最大で0.15%程度になる可能性がある

■NISA積み立て投資枠での投信の選定基準

国内資産:信託報酬が0.5%以下
海外資産:信託報酬が0.75%以下

積み立て投資枠の商品選定も総経費率ベースにすべき。

まとめ

2024年4月からの投信、総コストの義務化の内容についてご紹介をしました。

2024年4月から投信の純資産残高に対する比率を総経費率として目論見書に記載するよう運用会社に義務付ける
 
この義務化について、記事を読む前は金融庁が指示でもしたのかと思いましたが、金融庁は指摘をしているだけのようです。どうやら是正勧告など強制的な行動はできないみたいですね。

金融庁も「顧客のために費用構造をわかりやすくする必要がある」と指摘する。

では、どこが指示をしたのかというと「投信協会」という言葉が記載されています。

投信協会が目論見書に総経費率の記載を求めるのは、煩雑なコストの開示が投資家を惑わせているとの指摘があるため

「投信協会」がコスト開示すべきと思ったわけではなく、「指摘」があったから記載を求めたの?

ちょっと臭ったので調べてみるとこのような団体でした。

一般社団法人投資信託協会は、投資者の保護を図るとともに、投資信託及び投資法人の健全な発展に資することを目的として設立されました。

本会は主に投資信託委託会社等を会員とする金融商品取引法上の自主規制機関であり、令和4年4月1日現在で会員会社数は正会員(投資信託及びJ-REITの運用会社)202社及び賛助会員39社となっています。

要は投信の運用会社で作られている団体です。今回の総コスト記載は自分達で決めたということです。

「個人投資家が知識を付けうるさいし、来年から新NISAも始まるので、そろそろコスト開示をしてしまいましょうか」という声が聞こえてきてしまいました。談合ですね。(^^;

設立は1957年です。まともな規制団体であれば66年間もの間、投資家が負担するコスト開示を指示できないわけがありません。

自分達に不利になることは、なるべくしないということです。自主規制なんてものは機能しません。

「世の中の流れに押されて、仕方なく開示した」というのが本音でしょう。

このような流れでの重い一歩なので、他にも考えがめぐってしまいます。たとえば、今回開示する「総コスト」は、本当に”投資家が負担する全てのコスト”が記載されているのでしょうか?

もし、「実は他にもあるんです」なんてことになれば、信用ゼロですね。

 

コスト開示をすることを決めたのが「トレカン」が発表される前か後かは分かりませんが、「トレカン」のコスト問題で投資信託のコストについて注目されるよい機会になりました。

個人的には「トレカン」は全く否定していません。「注目されているので第一期の決算に向けてがんばってください!」というだけです。

少しビックリしたのは、以下記事の5月の投信積立契約件数ランキングで11位だったことです。すぐに飛びつくのではなく、様子見することをお勧めします。

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金融庁の投信、NISA選定基準については、すぐにでも「総コスト=実質コスト」に変更すべきです。

 

業界の体質がすぐに黒から白になることはないので、個人投資家は、今後も総コスト(実質コスト)とリターンを比較しながら厳しい目線で投資商品を選ぶ必要がありそうです。

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