金融庁が4月21日に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」の中で、投資信託のシステムの問題により発生しているコストを投資家が負担していることを指摘しています。
投資家が負担する投資信託のコストが増える仕組み
東洋経済ONLINEさんの記事はこちら。
まとめると。
システム会社間の競争がない状況では金融機関側のコストが押し上げられ、その負担は最終的に一般利用者に転嫁されかねない。
公開販売ネットワーク
運用会社と販売会社が投信の運用状況などに関するデータをやり取りする仕組み
計理システム
基準価額(投信を売買する際の価格)を算出するシステム
・「計理システム」事業者のシェアが約7割を占め、公販ネットワークでも寡占状態となっている。
・システムのコストは結果的に、投資家への負担増加につながり、『貯蓄から投資へ』の流れを阻害する要因となりかねない
・事業者間の競争が働かず、それが金融機関側のコスト高の原因になっている
・森信親元長官の時代にシステムの寡占化について正式に問題提起すべきという声が上がったものの、「それが彼らの商売なら仕方ない」と幹部からの意見で頓挫した経緯がある。
・現金融庁長官は「こういう市況で一部システム会社の業績だけが好調というのは違和感がある」と発言
・NISAは金融機関側にとって“うまみ”は小さく、システム整備の負担増に対する不満が根強い。
・NISA口座倍増という政府目標に向けた取り組みに事業者間の温度差も目立つ
・金融庁は「成長投資枠」の対象商品選定をめぐって業界側との折衝に苦戦
・システム業界を槍玉に挙げたのは資産運用業界全体の“ガス抜き”的な狙いも透ける
・金融機関のコスト削減にとどまることなく、一般利用者である国民の利益追求につながる改革を実現できるかどうか、金融庁の調整力が問われている
まとめ
「投資家が負担する投資信託のコストが増える仕組み」についてご紹介をしました。
「資産運用業高度化プログレスレポート2023」の原本はこちら。
「それが彼らの商売なら仕方ない」と幹部からの意見で頓挫
●システム開発・運用会社がほぼ1社で独占されている
⇒競争がないため、価格が高くなる
●投信のデータがある「公販ネットワーク」(図の真中)がそれぞれのシステム会社独自の仕様で作られているのでデータをやり取りする互換性があったり、なかったりする
⇒資産運用会社と販売会社は、複数社のデータを取得するため、各社のシステムを導入、運用をすることになりコストが増える
●「公販ネットワーク」(図の真中)のデータを取得して投資信託の基準価額を計算する「投信計理システム」(図左枠)を導入する必要がある。
⇒「A社 公販ネットワーク」を作ったA社が「投信計理システム」もほぼ独占するためコスト高となる(自動処理は可能)
⇒「A社 公販ネットワーク」とは別のA社以外のシステム会社に「投信計理システム」を依頼する場合は「A社 公販ネットワーク」への接続料を支払う必要がある上、自動で処理ができず、手作業が必要になるためコスト高となる
※資産運用会社だけではなく販売会社も同様の問題あり
日照合するという、独自の慣行がある。
⇒資産運用会社が自ら投信計理システムや計理人材を調達し、システムのメンテナンスのためにも人員を配置しなければならない。システム、人員について二重のコストが発生している。
金融庁が直接の管轄ではないシステム領域の課題に踏み込んだ背景には、政府が打ち出したNISA拡充策をめぐって証券界や銀行界で渦巻く不満がある。
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