投資信託のコストは信託報酬ではなく総経費率で判断する

「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」の登場で投資信託のコストについて議論が活発になっています。

非常に分かりにくい投資信託のコストは投資家が知識を付け、投資すべきか判断をする必要があります。

信託報酬はコストの一部にすぎない

日経新聞さんの記事はこちら

投資信託、総経費率を見極め 海外資産型で年5%超も - 日本経済新聞
2024年からの新しい少額投資非課税制度(NISA)の導入を前に、投資信託の信託報酬の引き下げ競争が活発化している。同じ運用内容ならコストが小さいほど投資家の資産が増えやすいためだ。しかし実は信託報酬はコストの一部にすぎず、その他の費用を加...

まとめると。

信託報酬はコストの一部にすぎず、その他の費用を加えた真のコストである「総経費」をみることが重要だ。

24年春以降は購入時に開示される目論見書に「総経費率」の掲載が始まる。

■投資信託のコスト

信託報酬(資産の管理・運用に必要な費用)
・運用会社や販売会社などが受け取る
・海外資産の保管費用、監査費用などは一般には含まない
参照指数の使用料や書類の印刷費用は含める投信と含めない投信がある

その他費用
・外貨建て資産の保管費用
・監査費用
・印刷費用
・参照指数の使用料 など

海外では総経費を純資産総額で割った「Expense Ratio(総経費率)」でコストを考えることが多い。

■純資産総額に対する信託報酬の割合と総経費率

総経費率
3月末時点で1年以上の運用実績のある投信

国内株型 信託報酬×1.04倍
先進国株型 信託報酬×1.11倍
新興国株型 信託報酬×1.27倍
国内債券型 信託報酬×1.03倍
先進国債券型 信託報酬×1.09倍

総経費率の大きい投信の例

A投信:不動産投資信託(REIT)指数の逆方向に2倍程度の値動きになる
信託報酬が年0.9%に対し総経費率は18倍の年16%強

B投信:金融機関に任せる「ラップ」運用
信託報酬は0.20%に対し総経費率は年12%

C投信:日本株の買いと空売りを組み合わせる
総経費率は12%強

D投信:インド株で運用
総経費率は5%以上

■総経費率が高い投信の傾向

1.純資産総額が小さい
2.保管費用が高くなりがちな新興国など海外資産型
3.値動きが指数の動きの数倍となる高レバレッジ型やロング・ショート型など取引手法が複雑な投信
4.株式比率が高い

・純資産総額はコスト高と早期償還のリスク高につながる
・長期の運用では小さなコスト差が、資産に大きな影響を与える

・総経費率は正確には決算後にわかるので運用報告書で総経費率の実績をみておくことが重要

・同一基準での比較が困難な、組み入れ銘柄の売買手数料が計算には含まれないなど、総経費率も万能ではない

・新規設定の超低コスト投信には飛びつかず、総経費率がわかってから選択することも一案

まとめ

「投資信託、総経費率を見極め」の記事についてご紹介をしました。

以下が投資信託のコストに関して憶えておくべき内容です。

・投資信託はコストは信託報酬だけではなく総経費率(実質コスト)で判断をする

・総経費率(実質コスト)にも含まれない公表されていないコストが存在する

・純資産額の確認はコストにも影響するので重要


・新規設定された信託報酬が低い投信への乗り換えは運用後の総経費率(実質コスト)を確認してから判断をする
 
今回、ご紹介をした記事の内容は今までも言い続けていることではありますが、
「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」の登場で投資信託の分かりずらいコストについて、論議が活発になっているのはよい事です。
通称「トレカン」で話題になったのはこの部分です。
参照指数の使用料や書類の印刷費用は含める投信と含めない投信がある
トレカンは「MSCIオール・カントリー・インデックス」というインデックスを使用していますが、この使用料を信託報酬に含んでいなかったのでヤーヤー言われているわけです。
トレカンの詳細な内容についてはこちら
SBI証券に「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」が登場
日興アセットマネジメント株式会社は手数料が最安の「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」を4月26日に新規設定します。

 

現状では規定違反を犯しているわけでもないので、きちんと結果さえ出してくれれば問題ありません。

ただし、基準がバラバラで簡単にコストが比較できない今の投資環境は投資家にとって、とてもよい環境とは言えないので早急に金融庁に整備いただきたいと思っています。

総経費率(実質コスト)のより具体的な確認方法についてはこちらで説明しています。

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以下の内容は何だかモヤモヤします。できれば「開示したくない」内容だったので開示しなかったのか?とか考えてしまいました。(^_^;

総経費率は来春からは購入時の目論見書でも参考情報として過去実績が開示される

「消費者(投資家)がモノを買う時に全ての内容を確認できず、他の商品と簡単に比較できない」こと自体がおかしいです。

株式に限らず、投資業界(不動産など)には残念ながらこのようなことが多いですね…

金融庁には以下の内容を強制的に開示する方向で整備いただきたいです。

運用でかかった”全てのコスト”を分かり易い形で目論見書や運用報告書で開示し各ファンドの実質コストを簡単に比較できるようにする。
現状では、知識を付けておかないと”合法的な詐欺”に引っかかってしまう可能性があります。最低限の知識を付けて投資をしていきましょうね。
 
 
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