シリコンバレー銀行はなぜ破綻し今後どうなるのか

シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻し、その余波で米国相場が揺れています。なぜ破綻し今後はどうなるのでしょうか。

FRB利上げによる債券価格の下落で含み損が拡大

シリコンバレー銀行は3月10日に経営破綻し米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれています。

■シリコンバレー銀行破綻の主な動き

3月8日 持ち株のSVBファイナンシャルグループが保有債券売却による18憶ドルの損失計上と22億5000万ドルの増資計画を発表
3月9日 SVBの株価が60%下落。預金420億ドル引き出し、9億5800万ドルの現金不足となる
3月10日 米連邦預金保険公社(FDIC)はSVBの破綻を発表。預金保護を発動。

3月11日 米財務省、FRB、FDICが全預金保護を発表

シリコンバレー銀行(SVB)とは

SVBファイナンシャル・グループ傘下のSVBは1983年に創業。

口座の開きやすさ対応の速さなどでスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)の支持を受け、VCが投資する米国のテックやヘルスケア企業の約半数がSVBと取引をしている。

グループでVCも持ち、米国を中心に約530件投資。富裕層向け資産運用も手掛けるため起業家のニーズも満たす。シリコンバレーのエコシステムの中核を担う金融機関です。

2021年にあおぞら銀行がSVB関連の投資ファンド、SVBキャピタルと提携している。

破綻した理由

金融緩和に伴うカネ余りで、スタートアップは資金調達を拡大しSVBに預金をしていた。

預金が増える一方で株式で十分に資金調達していたスタートアップへの融資需要は低かったため、SVBは運用先として住宅ローン担保証券(MBS)など有価証券の購入をすすめた。

米連邦準備理事会(FRB)が2022年3月に利上げを開始し金利が急に上昇したため、保有している債券の価格が下落し含み損が拡大した。

金融引き締めにより、スタートアップからの預金も減少していた。

SVBファイナンシャル・グループは8日、一部保有債券の売却に伴う損失計上と、普通株発行などによる増資を発表

2023年2月末時点で150億ドルの現金を持つなど流動性のある状態を強調したが、巨額損失を出しての債券売却と増資が信用不安となる。

9日に株価は前日比60%急落した。増資に失敗し、身売り先を模索したが、10日に経営破綻と事業停止となった。

9日に投資先が多額の預金を引き出し、すぐに資金繰りが行き詰まった。

FDICの預金保護の上限を超えた預金額が預金全体の約9割を占めたために、取り付け騒ぎを広げたとみられている。

日経新聞 シリコンバレー銀行 預金者別の預金額内訳

 今後

モーニングスターによると「SVBの破綻は、金融システム全体に波及する可能性は少ない独自の危機」とした一方で

「流動性のリスクが高まっていることを浮き彫りにした。資金調達圧力が四半期ごとにどう変化し、リスクがいつ顕在化するかを予測することが非常に困難だということを明白に示した」としています。

またスタートアップ側の焦点である運転資金の確保については「SVBから資金を取り戻せない場合、多くのベンチャー企業が現在の景気減速を乗り切れるか疑問だ」としている。

金利上昇の影響を受けて保有有価証券の含み損が増大している金融機関は他にもあり、SVB破綻によって銀行株は軒並み下落している。

個人預金の比重が高い金融機関は、預金保険適用部分の比率が高いことから、SVBのように短期的な信用不安は起こりにくいと考えらえる。

財務省、FRB、FDICの連名で、SVBの預金が保護されるとともに、税金が投入されることはなく、米国の銀行システムの安定性は確保されるとの声明を発表したことから市場に一定の安心感は生まれている。

SVBの自力での再建は厳しく、他企業の買収も難航しています。

https://www.cnbc.com/2023/03/13/hsbc-buys-silicon-valley-bank-uk-protecting-deposits-.html

SVBの破綻が金融危機に直接つながらないとしても、シリコンバレーのベンチャーエコシステムには深刻な影響となる。

また、日本の金融業界の債券投資による含み損の拡大は後々になって効いてくる可能性があります。

 

まとめ

米国を賑わせているシリコンバレー銀行の破綻理由などについてご紹介をしました。

・FRBの利上げにより大量に保有していた債券価格が下落し含み損が拡大
・信用不安で取り付け騒ぎとなり短期間で高額の預金が引き出された
 

米国内、世界へとは連鎖しないという意見が大半ではありますが、リーマンショックの時も初めはこのようなことが言われていたのです。

連鎖を防ぐための対策として破綻後すぐに米財務省、FRB、FDICが全ての預金を保護すると発表したことは大きな安心感を預金者、関係者に与えたことは大きいでしょう。

また、連鎖しない理由としては、以下のような商品の違いが言われています。

リーマンショック
低所得者層向け住宅ローンを複雑に証券化した商品が大量に世界中で売買され焦げ付く
シリコンバレーショック

国債と住宅ローン担保証券(MBS)が利上げによる価格下落で損失拡大

そもそも、商品のリスクが異なります。サブプライムローンの証券はまさしくゴミでしたから。。

しかし、既に複数の銀行が連鎖破綻していますし、今後何が起きるかは分かりません。

実際に今回の件についてFRBやウォール街の担当アナリストは全く見抜けていなかったようですから。

リスクを取りすぎないようにするとともに、引き続き注視していきましょう。

 

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